抄録
我々は, 放射線照射されたラットから肺を摘出し, fluid-filled lung modelを適用して照射後急性期における肺胞上皮を介したNa+と水分輸送の変化を検討した. 肺胞を介した水分吸収量は15Gyの60Coを一回照射してから14日目に照射前値の1.8倍に増加したが, 21日目には照射前値と同等になった. Na+輪送量も同様に推移し, Na+輸送量と水分吸収量との間には正の相関が認められた. 回収された肺胞注入液中のLDHレベルは放射線照射後の時間に依存して増加した. 肺の湿/乾燥重量比は照射後7日目に増加し, 以降漸減する傾向にあった. 血中に投与されたエバンスブルーの肺胞液への漏出には有意な変動はなかった. 以上の成績は放射線照射後に肺胞上皮を介したNa+輪送能が一過性に活性化され水分吸収能が亢進することを示唆している.