2007 年 68 巻 8 号 p. 2051-2055
症例は60歳の男性で, 健診にて肝腫瘍を指摘された. 腹痛, 黄疸はみられず, 血液生化学検査では肝機能, 腫瘍マーカーに異常はなく, 肝炎ウイルスマーカーも陰性であった. 腹部超音波検査, CTでは肝S4に直径40mmの境界明瞭な腫瘍がみられた. 腫瘤を生検し, 肝血管筋脂肪腫と診断された. 1年の経過観察の後, 腫瘍は直径55mmまで増大したため, 出血や肝破裂, 悪性化の可能性を否定できず, 肝内側区域切除術を施行した. 腫瘍は肉眼的に充実性で, 被膜を有し, 組織学的検索にて血管筋脂肪腫と診断された. 術後12カ月経過した現在, 再発などの兆候はみられない. 最近7年間の肝血管筋脂肪腫本邦報告例は43例みられ, そのうち7例に腫瘍の増大がみられた. 肝血管筋脂肪腫は原則経過観察となるが, 短期間に腫瘍径が増大する症例では切除の検討が必要であろう.