日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
乳房温存治療を選択した潜在性乳癌の3例
久森 重夫柳田 敦子松末 亮大越 香江築貫 郁西村 理
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 5 号 p. 1037-1042

詳細
抄録

初回手術として腋窩郭清のみを行った潜在性乳癌の3症例を経験した.主訴はいずれも腋窩腫瘤で同部の生検或いは細胞診にて腺癌と診断した.各種画像検査で乳房内および他臓器に原発巣を指摘し得ず,全例に腋窩リンパ節郭清術を行った.病理組織学的検査ではいずれもリンパ節の一部に腺癌を認め,潜在性乳癌と診断した.3例とも乳房切除および放射線療法を希望せず,乳房は経過観察となった.それぞれの経過では,症例1は術後5年間内分泌療法を行い6年目に左乳房内に乳癌を認めたため左乳房切除術施行した.その後内分泌療法を継続し13年目で健存中である.症例2は化学療法を施行し術後9年6カ月無病生存中である.症例3は内分泌療法継続中5年目に膵頭部癌を発症し,同疾患の肝転移にて翌年に死亡した.潜在性乳癌の治療は,すでにリンパ節転移が存在するため,その切除と全身療法が必要であるが,乳房に対しては各種抗腫瘍剤を駆使した上で,慎重な経過観察を行う乳房温存も選択肢の一つとなりうると考える.

著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top