2008 年 69 巻 5 号 p. 1208-1212
症例は60歳,女性.自覚症状はなく,平成18年2月に人間ドックの腹部単純Computed Tomography(CT)検査像で,膵尾部に腫瘤を指摘され当センターを紹介受診した.血液検査上,腫瘍マーカー,インスリン,グルカゴン,ガストリンの上昇は認めなかった.腹部造影CT像で,膵尾部に球状で隣接する画像上性状の異なる2つの腫瘤を認めた.大きさはそれぞれ1.5cm大であった.一方は,造影効果を伴う充実性の腫瘤で,他方は経時的に画像所見の変化を認めた嚢胞性腫瘤であった.出血性嚢胞を伴う非機能性膵内分泌腫瘍の術前診断で脾温存膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的検査では仮性嚢胞を伴った膵臓内副脾と診断した.膵尾部に嚢胞を伴う腫瘤を認めた場合は鑑別診断の1つとして膵臓内副脾を考慮する必要があると考えられた.