2009 年 70 巻 12 号 p. 3728-3731
症例は84歳,女性.1年前より繰り返す右鼠径部痛で整形外科に通院していた.数日前より強い右鼠径部痛を認め,精査目的で施行した骨盤部MRI・CT検査で右閉鎖孔に嵌入する軟部組織陰影を認め当科に紹介された.Howship-Romberg signは陽性で,右閉鎖孔ヘルニアと診断し緊急手術を考慮したが,入院直後に症状は消失したため,再度腹部CT検査を施行したところ,閉鎖孔の軟部組織陰影は消失しており自然還納されたものと診断した.後日,待機的に鼠径法でDirect Kugel Patchを用いて根治術を施行した.Patchが閉鎖孔を十分に覆っていることを確認するために腹腔鏡を併用した.本法は,鼠径ヘルニア修復術と同様の術式であるが,閉鎖孔ヘルニアに対しても,閉鎖神経と動静脈の損傷リスクの少ない低侵襲手術として有用であると考えられた.