2009 年 70 巻 5 号 p. 1561-1565
78歳男性.4年前より右鼠径部膨隆・陰嚢腫大を自覚するも放置していた.陰嚢腫大が進行し,歩行障害を主訴に当院を受診した.来院時,陰嚢底部が右大腿中点まで達していた.CTにて回盲部腸管を内容物とする右鼠径ヘルニアと診断した.また,虫垂は先端に糞石を有し,炎症性に腫大していた.右総腸骨動脈瘤(最大径45mm)の合併も認めた.二期手術を行うこととし,まず鼠径部アプローチにて虫垂切除とヘルニア根治術(メッシュプラグ法)を施行した.ヘルニア内容物は約150cmの回腸と盲腸であり,腸管に虚血性変化や癒着は認めなかった.術後経過に問題はなく,動脈瘤の変化も認めなかった.3カ月後に右総腸骨動脈瘤に対してYグラフト置換術を施行した.ヘルニア手術時より1年経った現在も,ヘルニア再発はなく,メッシュプラグや人工血管の感染といった合併症も認めていない.