日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前化学療法により組織学的完全奏効が得られた高度浸潤直腸癌の1例
田口 昌延宮倉 安幸熊野 秀俊堀江 久永冨樫 一智安田 是和山口 岳彦
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2010 年 71 巻 10 号 p. 2676-2681

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抄録

症例は69歳,男性.血便を主訴に近医を受診,直腸癌を疑われ当院紹介となった.下部消化管内視鏡検査では直腸Rasbに環周率90%の2型腫瘍を認め生検結果は高分化管状腺癌であった.CT・MRIで膀胱,精嚢への浸潤を認め,直腸傍・右側方リンパ節転移を疑った.他臓器浸潤直腸癌Rasb,2型,cSI,cN3,cH0,cP0,cM0,cStageIIIbと診断した.経過中に大腸イレウスを発症したため人工肛門を造設した.側方リンパ節転移と周囲臓器への高度な浸潤を認めていたため化学療法を先行した.mFOLFOX6を4コース施行し,その内bevacizumabを2回併用した.その後,原発巣は著明に縮小し部分奏効を得たため根治術を行った.手術では腫瘍は膀胱,精嚢,前立腺と一塊に存在し,腫瘍の残存を疑いこれらの臓器を含めた骨盤内臓全摘術を施行した.病理組織学的検査では,癌細胞は認めず組織学的完全奏効と判定した.

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© 2010 日本臨床外科学会
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