日本臨床外科学会雑誌
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症例
糞線虫が原因と考えられた小腸穿孔の1例
久島 昭浩高橋 雅哉高橋 克之蜂須賀 仁志布村 眞季
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キーワード: 糞線虫, 腹膜炎, Ivermectin
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2010 年 71 巻 11 号 p. 2855-2859

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抄録

症例は63歳,男性.吸収不良症候群の状態で入院となり,糞便と尿検査から播種性糞線虫症と診断した.糞線虫症治療薬であるIvermectin(ストロメクトール®)を投与したが,小腸穿孔による腹膜炎を発症し緊急開腹手術を施行した.糞線虫は熱帯・亜熱帯地域に広く分布する寄生虫で,日本では九州南部,沖縄に保虫者が多く存在している.成虫は十二指腸および空腸粘膜に寄生し,自家感染により感染が何十年も持続する.過剰感染を起こすと腸管の固有筋層に虫体が浸潤し吸収不良症候群やイレウス,小腸壊死を引き起こすことがある.九州,沖縄に居住歴のある原因不明の腹膜炎や腸管壊死,イレウスの患者の診察に際しては糞線虫症を鑑別する必要がある.

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© 2010 日本臨床外科学会
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