2010 年 71 巻 11 号 p. 2974-2979
症例は26歳,男性.既往歴,家族歴に特記事項なし.腹痛のため近医に入院し腹腔内腫瘤の診断で腹腔鏡検査を受けた.胃大弯側に白色腫瘤を指摘されたが,切開生検でも確定診断は得られなかった.退院後,当院での精査,治療を希望し受診した.腫瘤は,CTで12×3cmの大きさで不均一な造影効果を示し,MRIではT1強調画像で筋より軽度低信号,T2強調画像で低信号を呈した.FDG-PET/CTでは不均一な軽度の集積を認めたが周囲に存在した小結節には集積しなかった.以上より線維成分に富んだ分裂能の低い腫瘍が疑われ,デスモイド腫瘍を第一に考え手術を施行した.腫瘍は大網に限局して存在していたため大網切除術により完全切除された.病理組織検査でデスモイド腫瘍と診断された.既往歴,家族歴に特記事項なく,大網に限局して発生したデスモイド腫瘍は稀であり,文献的考察を加えて報告する.