日本臨床外科学会雑誌
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症例
鼠径アプローチによるDirect Kugel法にて修復した閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例
高坂 佳宏村山 弘之寺島 孝弘
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2010 年 71 巻 4 号 p. 1076-1078

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抄録

症例は91歳,女性.嘔吐と左鼠径部から左大腿部への放散痛を主訴に来院.腹部CTにて小腸の左閉鎖孔への嵌頓とそれより口側の振張像を認めたため,左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,同日緊急手術を施行した.鼠径アプローチで鼠径管後壁を切開した後,嵌頓したヘルニア嚢を環納し腹膜を切開し腹腔を開放したところ,小腸に壊死は見られなかったため,Direct Kugel法にて修復した.術後経過は順調で第14病日に退院した.閉鎖孔ヘルニアは高齢者に多いため,鼠径法からのアプローチは小切開でも直視下に閉鎖孔を確認し,小腸を十分に観察できるため,切除術も十分に可能である.また,腸切除が必要のない時は同操作で腹膜前腔を剥離できるため,Direct Kugel法でtotal hernia repairが可能である.閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対する鼠径アプローチのDirect Kugel法は安全で合理的な術式と考えられた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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