抄録
今回,術前温熱放射線化学療法が奏効し,根治術を施行することができた肛門管癌症例を経験したので報告する.症例は63歳,男性.肛門部腫瘤と疼痛にて来院した.受診時,肛門から臀部にかけて径5.5×7cm大の自壊を伴った腫瘍性病変を認めた,精査にて高分化型肛門管腺癌と診断された.ストーマ造設の上,術前温熱放射線化学療法を施行したところ,腫瘍は著明に縮小し,腹陰式直腸切断術と鼠径部リンパ節を含むリンパ節郭清術を施行し,大腿筋皮弁術および植皮術にて再建した.現在,肛門管癌に対する放射線化学療法は広く普及されている補助療法であるが,温熱療法を併用することにより腫瘍縮小効果はさらに高まると考えられた.肛門管外に巨大発育した肛門管癌に対する手術では会陰部切除が広範囲となり,術前の腫瘍縮小は再建においても非常に重要であると思われる.副作用の少ない温熱療法は術前補助療法として期待される治療法であると考えられた.