2010 年 71 巻 8 号 p. 2179-2184
症例68歳・男性.14年前肝機能障害,6年前右腎盂尿管癌.経過観察時に,腹部USで肝腫瘍指摘され入院.腹部画像検査で,肝S8に径3cm強の境界明瞭な腫瘍を認め,さらに膵鉤部には分葉状の3cm大の嚢胞性病変が描出した.肝腫瘍は,肝細胞癌・単発3cm以上.膵嚢胞性腫瘍は,膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)分枝型・3cm以上・MPD軽度拡張があることより両病変とも手術適応と判断.肝障害度A,ICG15分補正値11%,背景肝が慢性肝炎状態であり,同時手術は避け肝前区域切除先行し,7カ月後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術施行.肝組織は,肝細胞癌単結節周囲増殖型.膵組織は,膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)微小浸潤の混合型病変であった.IPMNは多臓器悪性腫瘍の合併が多く報告されている.今回,3重複癌である腎盂尿管癌術後の同時性肝細胞癌合併IPMCを報告する.