日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
気腹により横隔膜交通部を同定した難治性肝性胸水の1例
坂本 鉄基岩澤 卓細見 尚弘大西 直門田 卓士
著者情報
キーワード: 肝性胸水, 胸腔鏡, 気腹
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 9 号 p. 2321-2325

詳細
抄録

71歳,女性.C型肝炎,肝硬変,肝癌に対し治療中,2008年7月下旬から多量の右胸水による呼吸困難のため当院内科に入院,数回の癒着療法が無効のため同10月外科に紹介となった.腹腔造影CT,99mTc-macro aggregated albumin(MAA)シンチにて腹腔と胸腔の交通が確認されたため,同年11月胸腔鏡手術を行った.横隔膜に最大径10mmの薄壁嚢胞を数個認め,その他筋束に沿った数mmの小孔を数ヵ所に認めた.胸腔内を生理食塩水で満たしてから腹腔内に留置したカニューレから10mmHgで気腹を行ったところ,嚢胞内にエアの流入を認め,さらに横隔膜小孔の1カ所から気泡の発生を認めたため,同部と近接する嚢胞を含めた横隔膜を自動縫合器で切除した.術後2日目にOK-432による癒着療法を行い同3日目にドレーン抜去し,以降胸水の増加は認められなくなった.胸腔鏡下手術への気腹の併用は,低侵襲でより確実な交通部の同定を行うのに有用な方法と考えられた.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top