日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔動脈領域の非破裂segmental arterial mediolysisの1例
小林 正史阿部 徹村上 恭紀日向 理山根 徹藤井 秀樹
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2011 年 72 巻 1 号 p. 32-36

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抄録

近年segmental arterial mediolysis(SAM)に起因する腹部内臓動脈瘤破裂症例が注目されている.多くは破裂して診断されるが,今回非破裂で診断治療した症例を経験した.症例は35歳,女性.平成20年5月下旬に上腹部の腫瘤を自覚し,6月に当科を受診した.腹部打撲などの既往症はない.腹部超音波・CTで膵頭部に5cmと2cmの球状の連続した動脈瘤を認めた.膵アーケード部位で2カ所連続しているため塞栓術は困難と判断し手術を行った.5cmの動脈瘤は胃十二指腸動脈と右胃大網動脈分岐部,2cmの動脈瘤は5cmの動脈瘤に連続して前上膵十二指腸動脈に位置しており,これを切除した.病理組織学的に動脈瘤中膜に泡沫変性を認めSAMと診断された.SAMの成因は不明であるが,異時性に出現する報告もあり,今後も厳重な経過観察が必要と思われた.

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