2011 年 72 巻 10 号 p. 2563-2566
症例は56歳,男性.平成22年10月,右下腹部痛を主訴に近医受診.急性腹症を疑われ当院救急部受診した.来院時,血液検査にて炎症所見を認めなかったが,右下腹部に最強点を有する腹部全体の圧痛・反跳痛・筋性防御を認めた.CT検査では回盲部の脂肪織濃度上昇,上行結腸憩室・腹腔内遊離ガス像を認め,上行結腸憩室穿孔による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.術中所見では回腸末端より3cm口側の腸間膜側に穿孔部位を認め,周囲の腸管に炎症所見を認めたため,回盲部切除術を施行した.切除標本および病理組織学的所見より回腸の仮性憩室穿孔と診断した.術後経過は良好であり術後11日目に退院した.消化管憩室の中で小腸憩室の頻度は稀であり,穿通・穿孔をきたすことは少ない.しかし,診断の遅れにより致命的になることがあり,急性腹症の鑑別に回腸憩室穿孔も考慮すべきと考えられた.