2011 年 72 巻 12 号 p. 3171-3174
魚骨などの消化管内異物はそのほとんどが自然に排泄されるが,比較的稀に消化管穿孔・穿通や膿瘍・炎症性肉芽腫形成などを引き起こす.今回われわれは魚骨穿通による後腹膜膿瘍に対してドレナージ術を施行し治療しえた2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は73歳と83歳の男性で,精査にてそれぞれ右腎外側および下行結腸背側に内部に魚骨を伴う後腹膜膿瘍を認めた.両症例とも回復せずに後腹膜腔へアプローチし,膿瘍の切開・排膿および内部の魚骨の摘除を施行し,ドレーンを留置して手術を終了した.術後経過は両症例とも良好であった.本疾患では,術前に正確な診断を行い,確実に魚骨を除去することが重要であり,個々の症例に合わせて十分な検討の上,適切な術式を選択する必要があると考えられた.