日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前化学療法の併用により治癒切除した大動脈周囲リンパ節転移および肝転移を伴う進行胃癌の1例
島田 慎吾高橋 周作工藤 岳秋廣瀬 邦弘神山 俊哉佐治 裕
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2011 年 72 巻 2 号 p. 360-366

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抄録

症例は68歳,男性.他院にて胃癌の診断で当院紹介となった.上部消化管内視鏡で,胃体上部後壁に辺縁不明瞭な3型腫瘍を認めた.腹部CTでは大動脈周囲リンパ節をはじめ胃小弯側~左胃動脈周囲まで多数のリンパ節転移と思われる腫大を認め,肝S3に約2cmの肝転移と思われる腫瘤を認めたため,胃癌T2N3H1M0 StageIVと診断した.TS-1+cisplatinを2コース施行後,腹部CTで再度評価したところ,腫大した大動脈周囲リンパ節は消失し,胃小弯側~左胃動脈周囲のリンパ節腫大は著明に縮小し,PRとなったために胃全摘術+D3郭清術+肝S3部分切除術を施行した.術後病理検査にて原発巣とリンパ節には癌細胞の遺残はなく術前化学療法の効果はGrade3と考えられた.術後12カ月経過した現在も無再発生存中である.高度進行胃癌症例でも術前化学療法により予後延長が得られる可能性があると思われた.

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