日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝嚢胞として8年間経過観察されていた胆管内乳頭状腫瘍の1例
三城 弥範常見 幸三豊田 昌夫仙崎 英人螺良 愛郎
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2011 年 72 巻 2 号 p. 456-460

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抄録

症例は61歳,女性.2000年の腹部超音波検査にて肝左葉に隔壁を有する径2cmの孤立性肝嚢胞を指摘されていた.8年間無症状であったが,2008年3月に腹部膨満感を主訴に腹部超音波検査を施行したところ,嚢胞の増大を認めたため,当院に紹介となった.画像上,肝左葉内部に乳頭状結節を伴う径4cmの多房性嚢胞性病変と胆管拡張を認めた.ERCPでは肝内胆管に多量の粘液が貯留し,細胞診で悪性細胞を認めたため同年9月手術施行.病理組織学的には胆管内に胆管上皮に類似する細胞の乳頭状増殖を認め,卵巣様間質は認めず,胆管内乳頭状腫瘍(Intraductal papillary neoplasm of bile duct;以下IPNB)と診断した.IPNBは術前の確定診断が困難なうえ,組織学的に悪性の頻度が高いとされるため,隔壁を有する肝嚢胞の経過観察では,まれながらIPNBの可能性を念頭に入れておくことが必要である.

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