2011 年 72 巻 4 号 p. 1051-1054
症例は84歳,女性.1カ月前より徐々に増悪する右臀部から大腿部背側の痛みと歩行困難を主訴に当院受診.CTで大坐骨孔を通じて臀部にいたる骨盤内膿瘍を認めた.6カ月前のCTを遡ると,糞石を伴った虫垂の坐骨孔から臀部への脱出を認めた.坐骨孔より脱出していた虫垂の穿孔による骨盤内膿瘍と診断し,緊急手術を施行した.下腹部正中切開でアプローチすると,膿瘍腔は大坐骨孔を介して臀部まで広がっていた.メッシュ等によるヘルニア門の閉鎖は行わず,大坐骨孔にドレナージチューブを留置した.歩行可能となり第66病日に退院し,術後6カ月現在,再発は認めない.坐骨ヘルニアは稀な疾患であり報告例も少ない.中でも脱出臓器が虫垂であった症例は検索しえた限りでは認められなかったので,文献的考察を加え報告する.