2011 年 72 巻 6 号 p. 1573-1578
症例は70歳,女性.糖尿病にてフォロー中,USにて膵体部近傍に多房性嚢胞性腫瘤を指摘された.腹部CTで上縁は肝,下縁は胃前庭部から膵上縁,右側は十二指腸周囲に不整形で約95×45mm大の低吸収域の腫瘤病変を認めた.腹部MRIではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号であり嚢胞性腫瘤を示唆する所見であった.EUSにて多房性嚢胞性腫瘤認めたが,膵外病変・胃壁外病変で,嚢胞内部に結節は認めなかった.肝十二指腸間膜から網嚢での嚢胞性疾患・リンパ管腫を疑い,診断的意味も含め外科的切除を施行した.腫瘤は小網を中心に見られ,半透明黄色・軟で多房性であった.腫瘤の一部の迅速診断にてリンパ管腫の診断を得,可及的に腫瘤と胆嚢を一塊として摘出した.病理組織診でもリンパ管腫の診断であった.本例の如く小網に発生したリンパ管腫は稀であるため,若干の文献的考察を加え報告する.