日本臨床外科学会雑誌
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症例
Fallot四徴症を有する乳癌の1例
津福 達二田中 眞紀山口 美樹高良 慶子押領司 篤茂
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2011 年 72 巻 8 号 p. 1947-1951

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抄録

症例は52歳,女性,閉経後.初めて受けた乳癌検診で右乳房CD領域に腫瘤を指摘された.患者は幼少期にFallot四徴症と診断され,20歳時に受けた大動脈-肺動脈バイパス術による血行と大動脈からの側副血行路で肺循環を保っていた.乳房は精査の結果,浸潤性乳管癌T1cN0M0と診断された.入院時NYHA分類II度,SpO2 75%,動脈血液ガス分析で,pH 7.36,PaCO2 46torr,PaO2 46torrと低酸素血症を認めた.高度心奇形を合併しており治療法の選択に迷ったが,Performance Status 1で,切除の強い希望があったこと,麻酔科の管理可能の判断があったことで手術治療を決定した.肺循環を保つため自発呼吸を残したまま全身麻酔をかけ乳房切除術を行った.現在術後1年経過したが,無再発生存中である.
長期生存しているFallot四徴症患者の乳癌手術の報告はなく,非常にまれであるので報告した.

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