日本臨床外科学会雑誌
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症例
乳糜腹水を伴った絞扼性イレウスの1例
加藤 久仁之大塚 幸喜板橋 哲也箱崎 将規御供 真吾若林 剛
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2011 年 72 巻 8 号 p. 2056-2060

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抄録

症例は66歳,女性.腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部造影CT検査で造影効果を認めない小腸と腹水を認めたため絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.Treitz靱帯から130cm肛門側の小腸が50cmにわたり索状物で絞扼されていた.周囲に乳白色の腹水を認めた.絞扼解除で小腸の血流は改善したため腸管切除は施行しなかった.腹水Triglyceride値は526mg/dlと高値を示し,SudanIII染色陽性であったため乳糜腹水と診断した.術後経過は良好で第7病日に退院した.乳糜腹水を伴った絞扼性イレウスの報告例は本症例を含め9例とまれである.本疾患は絞扼によって腸管リンパ流が遮断された状態であっても,血流は保たれていたため,壊死による腸管切除は回避することができ,その経過は良好であった.

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