2011 年 72 巻 8 号 p. 2070-2074
症例は74歳,男性.右鼠径部腫張を主訴に当院を受診した.CT検査で右鼠径部皮下に膿瘍を認めたため同部位を切開排膿したところ,膿瘍腔の奥に瘻孔の形成を認めた.精査の結果,上行結腸憩室炎が後腹膜側に穿通し,鼠径部皮下との間に瘻孔を形成していた.チューブドレナージ,洗浄による保存的治療を継続した.炎症は消退して膿瘍腔は縮小したが瘻孔は閉鎖せず,右結腸切除術を施行した.術後経過は良好で瘻孔は閉鎖し,軽快退院した.結腸憩室炎による結腸皮膚瘻に対しては保存的治療のみで瘻孔閉鎖をみるのは困難で,局所の炎症が消退した後に早期に切除することが有効であると考えられた.