2011 年 72 巻 9 号 p. 2261-2265
患者は60歳,男性.30年以上前に食道アカラシアと診断されたが,その後通院していなかった.2005年につかえ感が増悪し,当院を受診した.上部消化管X線造影検査にてシグモイド型gradeIIの食道アカラシアと診断し,同年腹腔鏡下Heller-Dor手術を施行した.術後は年に一度,上部消化管内視鏡検査で経過観察していた.2008年上部消化管内視鏡検査で早期食道癌を認め,内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した.病理検査ではmoderately differentiated squamous cell carcinoma,0-IIc,m2,INFb,ly0,v0,pHM0,pVM0であり根治が得られた.食道アカラシア術後の食道癌発生は比較的まれである.食道アカラシア術後の定期的上部消化管内視鏡検査により,早期食道癌で発見し内視鏡的に治療可能であった症例を経験したので文献的考察を加え報告する.