抄録
症例は62歳,男性.検診で胃の異常を指摘され当院を受診した.上部消化管内視鏡で胃体上部小彎にIIc病変を認め,生検の結果中分化型管状腺癌の診断となった.CTで12個に分節した脾,膵に高度な脂肪浸潤および尾部欠損を認め,nonrotation型の腸回転異常症も認めた.心奇形,肝・胆嚢に位置・形態異常を認めず,十二指腸前門脈も認めなかった.内視鏡所見,生検結果などから壁深達度SMの胃体上部癌と診断し胃全摘術を施行した.膵の高度な脂肪浸潤のため,膵実質と周囲の脂肪組織やリンパ節との区別が不明瞭であり,リンパ節郭清に難渋した.腸回転異常症に対しては予防的虫垂切除術のみを施行した.術後は膵液漏などの合併症を起こすことなく経過良好であり,術後24カ月を経過した現在も再発や腸軸捻転の発症を認めていない.非常にまれな,多脾症,膵低形成,腸回転異常症を全て合併する胃癌の手術例を経験したので報告する.