2012 年 73 巻 6 号 p. 1455-1459
症例は60歳,男性.発熱と腹痛を主訴に受診.WBC 17,000/μl,CRP 25.93mg/dlと高度炎症所見を認めた.腹部CT検査で門脈内ガス像とS状結腸に憩室炎の所見を認めた.門脈ガス血症を伴う重篤な憩室炎と診断,穿孔の可能性も考え,緊急手術を施行した.術中所見では,腹腔内の汚染はなかったが,S状結腸全体が発赤,硬結を呈しており,腸間膜内への穿破を疑う所見を認めたため,S状結腸を切除し縫合した.術後に縫合不全を起こしたため,横行結腸に一時的に人工肛門を造設した.その後治癒し,人工肛門を閉鎖した.
門脈ガス血症は,腸管壊死を起こした際などに見られる比較的稀な病態で,開腹術を要する予後不良の徴候とされてきたが,近年では保存的治療で軽快を認めた報告例も散見されている.今回われわれは,門脈ガス血症を呈したS状結腸憩室炎の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.