症例は52歳，男性．主訴は腹部膨満．精査にて38cm大の巨大腫瘤を認めた．胃・空腸由来のGISTや後腹膜由来の非上皮性腫瘍（肉腫系，MFHなど）が疑われ腫瘍摘出術（幽門側胃切除+横行結腸部分切除）が施行された．腫瘍は多中心発生しており，それぞれ胃背側（網嚢），胃脾間膜，横行結腸間膜から発生したと考えられた．総重量は7,253g，病理組織学的には高分化型脂肪肉腫（胃脾間膜・横行結腸間膜）と脱分化型の脂肪肉腫（胃背側）の2型が存在した．術後3カ月で再発し腹部全体を占める腫瘤へ急速に増大．再手術を試みたが切除し得ず，化学療法・腫瘍血管塞栓術を施行するも効果に乏しく，初回手術から5カ月後に永眠された．脂肪肉腫は無痛性の腫瘤で進行して発見されることが多く，脱分化とともに急速に増大すると5年生存率30％と予後不良となる疾患である．完全切除が困難な場合も多く，補助療法や再発時の化学・放射線療法は確立されていない．
