2012 年 73 巻 7 号 p. 1817-1821
まれな漏出性胆汁性腹膜炎の1例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,突然の上腹部痛を主訴に救急搬送された.上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹手術を施行した.胆嚢に結石や炎症所見はなく,胆嚢に明らかな穿孔を認めないものの,底部の菲薄化した部分から胆汁の漏出を認めた.肝臓,総胆管,上部消化管にも異常を認めず漏出性胆汁性腹膜炎と診断し,胆嚢摘出術を施行した.胆汁性腹水培養検査は陰性であり,病理組織学的検査では胆嚢底部付近の胆嚢壁の一部は菲薄化しているのみで,胆嚢に穿孔部位は同定されず,漏出性胆汁性腹膜炎に矛盾しない所見であった.本疾患は,われわれが検索したかぎりでは本邦では18例しか報告されておらず,文献的考察を加えて報告する.