2012 年 73 巻 8 号 p. 1933-1937
患者は79歳,男性.外傷による脳器質性精神障害,認知症として精神科で投薬を受けていた.突然の心窩部痛と腹部膨満を訴え血圧が低下したために当科紹介となった.腹部膨満が著明で,圧痛,反跳痛,筋性防御を腹部全体に認めた.CTでは著明なfree air,胃拡張,食物残渣貯留,胃前壁内のガス像を認めた.胃拡張に伴う胃穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急開腹手術を施行した.胃体部前壁大彎の広範囲に壊死を認め,その内部に大彎線に平行に約10cmの漿膜筋層損傷と直径約1cmの穿孔を認めた.この壊死部周囲の胃体部前壁は蒼白であったが,胃体部後壁,噴門部および幽門部には異常を認めなかった.胃内部には多量の食物残渣を認めた.胃全摘術を施行し,術後大きな合併症を認めず術後約2カ月で前医へ転院となった.急性胃拡張に伴う胃破裂は報告が少なく,文献的考察を加えて報告する.