2013 年 74 巻 10 号 p. 2755-2760
症例は71歳,女性.嚥下時胸部不快感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査にて胸部中部食道後壁に0-IIa病変を認め,生検の結果扁平上皮癌と診断され当科を紹介受診した.胸部CTにて,右鎖骨下動脈起始異常(aberrant right subclavian artery ;ARSA)とKommerell憩室を認めた.cT1bN0M0 cStage Iの術前診断にて,右開胸開腹食道亜全摘,後縦隔経路胃管再建,および頸部郭清術を施行した.頸部操作でnon-recurrent inferior laryngeal nerve(NRILN)を確認し温存した.術後は嗄声や嚥下障害を認めず,第18病日に退院した.現在術後2年目で無再発生存中である.
ARSAは比較的まれな先天奇形であるが,NRILNなど脈管の走行異常を伴い,術前にこれらの存在を推測し,安全に手術を施行する必要があると考えられた.