2013 年 74 巻 2 号 p. 478-482
患者は47歳,男性.便潜血反応陽性のため大腸内視鏡検査を施行.上部直腸前壁に1/ 2周2型腫瘍を認め,生検で低分化腺癌の診断となった.術前診断は,SE,N1,H0,M0,cStage IIIaであった.また,術前検査にて左骨盤腎の併存を認めた.腹腔鏡による拡大視効果を期待し腹腔鏡下直腸低位前方切除術D3を施行した.術中に微小な多発肝転移を認めた.術後病理学的診断はpor,Ra,2型,40×40mm,pSS,pN2,sH3,sP0,ly3,v1,pPM(-),pDM(-),Stage IVであった.骨盤腎を併存した直腸癌の場合,術野確保が非常に困難であることが予想されるが,腹腔鏡手術は拡大視効果により狭小化した骨盤腔内においても手術可能であり有効な術式と思われる.