2013 年 74 巻 5 号 p. 1295-1299
症例は34歳,女性.腹痛で当科を紹介受診し絞扼性イレウスの診断で同日緊急手術を施行した.空腸間膜に8cm大の黄白色の柔らかい多房性腫瘤を認め,これを中心に空腸が捻転していた.腫瘤を含めて約30cmの空腸を切除した.嚢胞内溶液は漿液性で,病理検査にてリンパ管腫と診断した.腸管膜嚢腫は比較的まれな疾患で,病理学的にはリンパ管腫が最多である.腸管軸捻を併発した腸間膜リンパ管腫症例は,自験例を加えて過去に本邦で7例報告されている.治療には完全切除が必要だが,急性腹症で発症した場合には,緊急手術となることが多く,併存する炎症や不良な全身状態のため,病変の完全切除に悪影響を及ぼした症例も報告されている.腸管軸捻を契機として治療を受けた症例の多くにも腹痛などの先行症状を認めていることから,本疾患を認知し,的確な術前診断の元,急性腹症を発症する前に切除することが必要であると考えられた.