2013 年 74 巻 6 号 p. 1661-1665
背景:門脈圧亢進症を発症した肝内動門脈短絡に対する治療の第一は経カテーテル的治療であるが,再発を繰り返す症例もある.今回,塞栓術後に再発を繰り返した肝内動門脈短絡に対し肝切除が奏効した1例を経験した.症例:64歳女性.60歳時に肝右葉の巨大な動門脈短絡を指摘され,右肝動脈塞栓術施行したが,三回に渡り再開通した.4回目に塞栓を試みた際に後腹膜からの流入血管を認めたため,経カテーテル的治療は困難と考え経過観察を行っていた.その後,腹水が出現し,門脈圧亢進症が増悪したため手術施行した.開腹時,著明な腹水と萎縮した肝右葉を認めた.門脈圧は36mmHgと高値を示した.動門脈短絡に対する後腹膜からの流入血管を遮断し肝右葉切除を施行した.切除後,門脈圧は減少し,門脈圧亢進症の軽快を認めた.結語:経カテーテル的治療抵抗性の肝内動門脈短絡に対して肝切除を行うことで門脈圧亢進症が軽快した1例を経験した.