2013 年 74 巻 7 号 p. 1741-1748
乳癌症例において乳房縮小術などを併用して新たな形態の乳房を形成するvolume displacement typeの oncoplastic breast-conserving surgery(d-OBCS)は,一般的に乳房サイズの小さい本邦では,未だ認知度は低い.今回,われわれは本邦における症例蓄積が少ないd-OBCSについて検討を行った.対象症例は2007年7月から2011年12月までに乳癌に対して手術を行ったd-OBCS 120例で,腫瘍径と切除重量の中央値はそれぞれ,25mmと71gであった.2mmでの断端陽性率は14.2%で,合併症発生率は13.3%であったが,いずれも軽症であった.観察期間の中央値26カ月で,局所再発症例は認めていない.d-OBCSは合併症や断端陽性率を増悪させることなく腫瘍径や切除重量を増加させることができ,日本人においても安全に乳癌に対する乳房温存療法の適応拡大に寄与することが示唆された.