抄録
症例は64歳,男性.便潜血陽性の精査で行った下部消化管内視鏡検査で,歯状線直上にびらんを伴った隆起性病変を認めた.びらん部位の生検では悪性所見はなく,直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome,以下MPS)として経過観察となった.5カ月後に内視鏡検査を行ったところ同部位は潰瘍を形成しており,再度生検したところ腺癌を認め,経肛門的腫瘍切除術を行った.病理診断の結果,肛門管の粘膜間質に線維筋症の所見があり,それと混在するように再生異型の範疇を超える細胞異型を認めた.以上より,MPSに合併した高分化型管状腺癌と診断された.深達度はM,各断端は陰性であり現在外来で経過観察中である.MPSの診断の際には直腸癌との鑑別が重要とされるが,本症例のように経過観察中に癌が合併したという稀有な症例報告もある.若干の文献的考察を加えて報告する.