2013 年 74 巻 9 号 p. 2402-2405
症例は69歳の男性で,全身倦怠感を主訴に前医を自転車で受診した.心電図,心エコー,CTにて急性心筋梗塞後の左室自由壁破裂が疑われ,当院に救急搬送された.循環動態は非常に安定しており,意識消失やショック症状は認めなかった.冠動脈造影検査にて左前下行枝の閉塞が認められた.緊急手術を行ったが,循環動態が安定していたため,まず左内胸動脈を採取した.心嚢内は血腫で充満しており,心尖部に約2cmの亀裂がありblow out型の左室自由壁破裂であったと診断したが,出血は認めなかった.タココンブ®とフィブリン糊によるsutureless法による修復を行った.同時に大動脈内バルーンパンピングにて左室圧を軽減した.体外循環を用いることなく左内胸動脈を左前下行枝に縫合する冠動脈バイパス術を行った.術後経過は良好で術後25日に軽快退院した.自転車で受診した循環動態の安定した左室自由壁破裂の稀な症例であった.