2013 年 74 巻 9 号 p. 2557-2561
症例は64歳,男性.高血圧,狭心症にて内科通院中にスクリーニングの腹部CTにて肝腫瘤を指摘された.血液検査にてHBs抗原陽性以外,特記すべき異常は認めなかった.腹部造影CTにて肝S8に2cm大の辺縁濃染を示す乏血性の低吸収域を認めた.肝EOB-MRIでは肝細胞相において腫瘤中心部と辺縁部に造影効果に違いを認め,拡散強調像にて高信号を呈した.以上のことから,鑑別診断として硬化型肝細胞癌や炎症性偽腫瘍などがあげられたが,肝内胆管癌の診断にて肝S8亜区域切除術を施行した.術中,肝表面にやや発赤しわずかに隆起した腫瘤を確認できた.肉眼的に腫瘤は不整形の境界明瞭な白色結節で,組織学的には好酸球の豊富な炎症細胞浸潤の内側に類上皮細胞の柵状配列とその内部に壊死層が存在し,その一部にアニサキスの虫体を認めた.したがって肝アニサキス症と診断した.