日本臨床外科学会雑誌
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症例
進行直腸癌に併存した多発性肺硬化性血管腫の1例
横田 圭右齋藤 雄史辻 秀樹
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2014 年 75 巻 10 号 p. 2727-2731

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抄録

症例は57歳,女性.21年前にS状結腸癌,家族性大腸腺腫症にて大腸亜全摘手術の既往あり.血便主訴に当院受診し,精査で残存直腸の進行癌と肺転移を疑う右肺多発結節を認めた.直腸癌手術で局所治癒切除が得られ,かつ右肺多発結節の全切除が可能なため,直腸手術の50日後に右肺中葉切除,S6区域切除,S2・S8・S10部分切除術を施行.術前・術中は転移性肺腫瘍を疑ったが,病理検査にて多発性肺硬化性血管腫と診断された.肺硬化性血管腫は,頻度が肺腫瘍全体の約1%で,多発例は稀である.特異的な画像所見もなく,進行直腸癌と併存していた自験例での術前診断は困難と思われるが,転移性肺腫瘍に合致し難い画像所見も認めた.また,病理所見と比較検討すればCT画像は硬化性血管腫の病理学的特徴を反映していた.多発する肺結節では,鑑別診断として硬化性血管腫も念頭に置くこと,他疾患混在の可能性にも留意して治療方針を検討する必要がある.

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© 2014 日本臨床外科学会
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