日本臨床外科学会雑誌
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症例
甲状腺手術後30年以上を経過して発症した術後副甲状腺機能低下症の1例
矢野 由希子今井 延年外浦 功加茂 知久石丸 神矢
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2014 年 75 巻 11 号 p. 2967-2970

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抄録

症例は70歳,女性.35年前に甲状腺癌の既往があり,現在はかかりつけの近医で甲状腺剤投与を受けていた.自宅で転倒し,翌日にふらつき,痙攣,全身の硬直を主訴に救急外来を受診した.頭部CTでは頭部外傷に伴う異常所見はなかった.血液検査で著名な低カルシウム血症を認めた.血清intact-PTH値は低値であり,甲状腺癌手術後の副甲状腺機能低下症と診断した.カルシウムおよび活性型ビタミンD製剤の補充を開始し,血清カルシウム値正常化に伴い,意識症状の改善,テタニー症状の改善があり,退院した.甲状腺手術に伴う副甲状腺機能低下症の合併症は一過性と永続性副甲状腺機能低下症を合わせると比較的頻度の高い合併症であるが,その出現時期は手術直後である.今回,甲状腺全摘手術後35年という術後長期間を経過してから発症した副甲状腺機能低下症に伴う低カルシウム血症の稀な症例を経験したのでこれを報告する.

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© 2014 日本臨床外科学会
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