抄録
症例は63歳の男性で,体上部胃癌の診断で当科へ紹介となった.術前の凝固検査でPTは12.6秒と正常範囲内であったが,APTTは56.9秒と延長していた.出血性胃癌と診断し,胃全摘術を施行したが,術後第1病日にY脚吻合部から腸管内へ出血をきたし,止血・再吻合術を施行した.さらに,ドレーンの腹壁貫通部から腹腔内出血を呈したため,第8病日に開腹止血術を施行した.第VIII凝固因子活性は12.4%と低下を認めたため,後天性血友病Aの可能性を考え,prednisoloneの投与を開始した.すぐに専門医へ紹介し,第10病日に他院の血液内科へ転院となった.転院後,第VIII因子インヒビターは171.3BU/mlと上昇が確認され,後天性血友病Aと診断されたが,突如,致死的不整脈を起こし,心肺蘇生の甲斐なく永眠となった.原因不明の凝固機能異常や出血傾向を呈する場合は,後天性血友病を念頭に置くことが必要であると考えられた.