2014 年 75 巻 2 号 p. 437-441
Upside down stomachを呈する食道裂孔ヘルニア合併胃癌に対して,腹腔鏡下での胃切除術と食道裂孔ヘルニア修復術が有用であった,稀な1例を経験した.症例は73歳,女性.検診にて早期胃癌と診断され当院を紹介された.上部消化管造影検査では横隔膜上に全胃が脱出し軸変異を伴ったupside down stomachの状態で,上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部大弯側に0-IIc型の胃癌を認めた.食道裂孔ヘルニアに併存した早期胃癌と診断した.亀背,創痛による離床遅延,狭い縦隔内での視野確保を考慮し,腹腔鏡下に幽門側胃切除術および食道裂孔縫縮術を施行した.術後経過は良好で11病日に退院となった.