日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃全摘術後に発症した乳糜腹水を伴う内ヘルニアの1例
松永 壮人仲田 興平永井 英司山田 大輔大内田 研宙田中 雅夫
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2014 年 75 巻 5 号 p. 1261-1264

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抄録

症例は88歳の男性で,5年前の進行胃癌に対する開腹胃全摘術後の外来経過観察中,2012年6月に腹痛にて救急搬送となった.来院時腹膜刺激症状を伴い,CTで腹水貯留・小腸全体の拡張・closed loop signを認め,エコーガイド下の腹水穿刺で乳糜腹水を認めた.絞扼性イレウスの診断で,緊急開腹術を施行した.開腹所見では,乳白色の腹水を認め,Y脚腸間膜欠損部にほぼ全小腸が入り込む内ヘルニアであり,腸間膜は捻転していた.小腸は開腹時暗赤色であったが,捻転解除後,次第に色調が回復,蠕動も認められたため,腸管切除を行わず,手術を終了した.術後経過は良好であった.本邦における成人の乳糜腹水を伴った術後の絞扼性イレウスは医中誌で検索しえた限り本症例を含め8例の報告とまれである.いずれの症例でも腸管切除は免れており,乳糜腹水を認める症例では早期の手術が望まれるが,腸管は温存できる可能性が高いと考えられる.

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