日本臨床外科学会雑誌
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症例
大腸内視鏡検査前処置で誘発された壊死型虚血性大腸炎の1例
井上 亨悦林 啓一佐瀬 友彦井伊 貴幸山並 秀章富永 剛
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2014 年 75 巻 6 号 p. 1627-1631

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抄録

症例は85歳,女性.80歳時に虚血性大腸炎で保存的加療を受けている.大腸内視鏡検査前処置のピコスルファートナトリウム内服直後に腹痛と腹部膨満が出現し,翌日,症状の増悪と共に38℃の発熱を生じた.腹部CT検査でS状結腸捻転を疑い整復目的に大腸内視鏡検査を施行し,S状結腸粘膜は暗青紫色を呈したため,S状結腸捻転による腸管壊死と診断し開腹手術を施行した.開腹時S状結腸捻転はなかったが,S状結腸は壊死しており,S状結腸を切除し人工肛門を造設した.腸管の主要血管に閉塞はなく,ピコスルファートナトリウムで誘発された壊死型虚血性大腸炎と診断した.下剤で虚血性大腸炎が発症することは知られており,大抵の症例は保存的加療で軽快する.しかし,本症例のように腸管壊死に至る症例もあり,特に便秘症や腸管の癒着狭窄が疑われる場合は大腸内視鏡検査前処置の下剤使用に留意が必要と考えられた.

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