日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
嵌頓小腸が食道裂孔を経て縦隔内に嵌入した横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例
伏見 卓郎吉岡 貴裕松本 朝子村田 年弘上塚 大一宇田 征史
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 76 巻 11 号 p. 2831-2835

詳細
抄録

症例は92歳,女性.嘔吐・腹痛を主訴に救急外来受診.開腹歴なし.CT検査では縦隔内に脱出した拡張腸管を認め,脱出腸管により心臓は圧排されていた.脱出腸管の腸間膜は浮腫状に変化しており,脱出腸管が食道裂孔に嵌頓していると判断した.イレウス管造影ではTreitz靱帯から約20cm肛門側で完全狭窄の所見を認め,内ヘルニアによる嵌頓と判断し緊急手術を施行した.術中所見では横行結腸間膜に3cm大の裂孔を認め空腸が嵌頓していた.食道裂孔は6cm大で嵌頓腸管が食道裂孔を経て縦隔内に脱出していた.横行結腸間膜裂孔ヘルニア嵌頓と診断した.嵌頓を整復後,横行結腸間膜裂孔を閉鎖した.嵌頓腸管に壊死所見はなく,腸管切除は行わなかった.横行結腸間膜裂孔ヘルニアは比較的まれな内ヘルニアであり,症例報告が散見されるが,今回本邦報告例を検索した限りでは,嵌頓腸管が食道裂孔を経て縦隔内に嵌入した報告はない.

著者関連情報
© 2015 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top