2015 年 76 巻 2 号 p. 259-263
症例は67歳,女性.直腸癌,肝転移に対して手術歴あり.1年5カ月前に下大静脈浸潤を伴う肝転移に対して,下大静脈切除再建を伴う肝部分切除術を施行していた.腹部膨満を主訴に来院,腸閉塞の診断で入院となった.CT検査で再建に用いた人工血管が下腹部の小腸内に迷入し,それに伴う腸閉塞と診断し,緊急手術を行った.小腸を切開し腸管内の人工血管を摘出し,小腸壁は縫合閉鎖した.術後の上部消化管内視鏡検査で十二指腸に潰瘍瘢痕を認め,人工血管は十二指腸から腸管内に迷入し,腸閉塞の原因となったと考えられた.これまでに下大静脈再建に用いた人工血管が腸管内に迷入して腸閉塞の原因となった報告はなく,若干の文献的考察を加えて報告する.