2015 年 76 巻 9 号 p. 2252-2256
症例は61歳の男性で,貧血の精査目的に下部消化管内視鏡検査を受け,直腸と右側横行結腸にIp型ポリープを認めた.内視鏡的ポリペクトミーが行われ,陥凹を伴う横行結腸病変の病理組織診断では,鋸歯状腺腫の陥凹部に一致して長径5mm,SM浸潤(浸潤距離:1,100μm)したtub2を認め,浸潤先端部ではpor1もみられた.切除断端は陰性であったが,脈管侵襲はv0,ly1と診断された.腹部CT検査では中結腸動脈と腹部大動脈に沿うリンパ節2個に転移が疑われたため,追加治療の適応となった.結腸部分切除術とD3および大動脈周囲のリンパ節郭清を行った.病理組織学的に,中間リンパ節と大動脈周囲リンパ節の計2個に横行結腸病変の転移を認めた.術後補助化学療法を行ったが,術後2年9カ月で原病死した.跳躍転移と遠隔リンパ節転移を伴う結腸SM(T1)癌は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.