2016 年 77 巻 1 号 p. 204-207
症例は66歳,男性.膜性腎症の診断にて6カ月前からプレドニゾロン内服中であった.1カ月前から右背部痛の訴えがあり,腹部CTを施行したところ下大静脈の背側に5cm大の低吸収性腫瘤を認めた.周囲臓器からの炎症波及の所見はなく,原発性後腹膜膿瘍と診断した.抗生剤投与にて一時軽快したが,2週間ほどで症状が再燃したため後腹膜アプローチによる腹腔鏡下ドレナージ術を施行した.手術は左側臥位にて行い,後腹膜腔をバルーン拡張した後に外側円錐筋膜を切開して腎門部に至り,下大静脈を確認した.下大静脈背面の脂肪組織を除去し膿瘍壁を露出し,試験穿刺を行った後に開窓してドレーンを留置した.その後は術後7日目にドレーンを抜去し,術後11日目に退院した.原発性後腹膜膿瘍を腹腔鏡下にドレナージを行った稀な1例を経験したので報告する.