乳頭部乳癌の2例を経験したので,文献学的考察を加えて報告する.
症例1:63歳,女性.半年前からの右乳頭血性分泌,乳頭部腫瘤を主訴に受診.右乳頭が2cmに腫大し,生検結果は非浸潤性乳管癌であった.右乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.センチネルリンパ節生検は陰性であったが,C領域乳腺断端が陽性となり追加切除を要した.切除標本は主に非浸潤性乳管癌が占めていたが,一部に浸潤性乳管癌を認めた.
症例2:90歳,女性.3年前から左乳頭部腫瘤を自覚していたが放置し,出血を伴うようになり受診.左乳頭が3cmに腫大し,右乳房AC領域に5cmの腫瘤を触知した.生検結果は共に浸潤性乳管癌であり,左側は乳房全摘術・腋窩郭清,右側は乳房全摘術を施行した.左乳頭部腫瘤は充実腺管癌であり,乳頭下乳腺に異型乳管上皮細胞が充実性に増殖・浸潤する像を認めた.右乳房腫瘤は乳頭腺管癌であった.