日本臨床外科学会雑誌
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症例
パッチ閉鎖術にて救命した嚢状腹部大動脈瘤破裂の1例
沼田 るり子井上 堯文藤崎 正之末松 義弘
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2016 年 77 巻 10 号 p. 2429-2432

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抄録

大動脈終末部に生じた嚢状腹部大動脈瘤破裂に対しパッチ閉鎖術を施行し救命しえた症例を経験したため報告する.症例は85歳,女性.高血圧,糖尿病,脂質異常症,狭心症の既往あり.左側腹部痛と嘔吐を主訴に救急搬送され,出血性ショックを伴う大動脈終末分岐部嚢状瘤破裂(Fiztgerald分類III型)の診断で緊急手術を行った.破裂部位は嚢状瘤の瘤壁の一部であった.瘤への入口部は大動脈終末部の前壁に円形に欠損し,大動脈終末部の拡張はなく形状が保たれていた.大動脈終末部周囲は動脈硬化性変化や炎症による癒着が強く剥離操作による出血量増加,循環動態の維持困難が懸念され,救命を優先し人工血管置換術ではなく欠損孔のパッチ閉鎖術を選択した.パッチ閉鎖により出血はコントロールされ,術後も経過良好であった.しかし,パッチ閉鎖術の欠点として遠隔期の仮性瘤形成が指摘されており,今後もCTなどの画像検査による経過観察が必要である.

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