2016 年 77 巻 5 号 p. 1116-1121
症例は75歳,女性.食後の間欠的な腹痛を主訴に当院を受診した.血液検査で貧血を認め,造影CT検査で小腸内腔の9×4cmの腫瘤を先進部とした小腸の拡張を認めた.小腸腫瘍に伴う腸閉塞と診断し,手術を施行した.漿膜面への露出のない内腔に発育する小腸腫瘍を認め,小腸切除術を施行した.病理組織検査では,紡錘形細胞が錯綜状に増殖しており,免疫染色の結果と合わせて小腸原発悪性末梢神経鞘腫(malignant peripheral nerve sheath tumor:以下MPNST)と診断した.術後1年5カ月で,貧血の進行を契機にMPNSTの再発が疑われ,再度手術を施行した.小腸内腔に発育する腫瘤と小腸間膜の腹膜結節を切除した.病理組織検査からMPNSTの小腸・腹膜播種再発と診断した.小腸原発のMPNSTは稀であり,内腔に発育し腸閉塞をきたした1例を経験したため文献的考察を加え報告する.